相続登記の場合分けについて


相続登記の義務化が2024年4月1日より始まりました。

テレビ等のメディアで取り上げられた影響か、相続登記の相談やご依頼が増えていると、最近特に実感しております。

ただし、相続登記と一言で言っても、相続人が1人なのか複数なのか、その不動産を誰がどのように権利を引き継ぐのか、または遺言書が残されているのか、等々、個々のご事情によって、手続きの進め方、必要な書類や申請書の書き方が大きく異なります。ですので、一度、専門家にご相談頂くことをおすすめします。

法務局のホームページを参照しますと、相続登記の申請・必要書類について、3パターンに場合分けされて、ご案内されています。

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001393744.pdf

1.遺産分割協議の場合

2.法定相続分の相続の場合

3.遺言書がある場合(法定相続人が相続する場合)

これらの3パターンについて、ご依頼者様の目線で説明したいと思います。

1.遺産分割協議の場合

法務局のホームページで、こちらの「遺産分割協議の場合」が1番に記載されているのは、やはり多くのご依頼者様がこのパターンに当てはまるからだと思います。

例えば、下記のような4人家族の構成とします。

父(被相続人)※亡くなった方を「被相続人」といいます。

→実家の土地と建物を所有しているとします。

長男

長女

→相続人は、母、長男、長女の3名とします。

相続人同士の話し合いで、母が不動産の名義を取得することになった場合、父から母への相続登記の申請が必要になります。そして、この話し合いのことを「遺産分割協議」といいます。

本来、父の相続人は、母、長男、長女の3名ですが、母が単独で不動産を取得することになったので、そのような話し合いをしたという結果を証明するために、遺産分割協議書という書面の作成が必要になります。

また、話し合いの内容は相続人同士の自由なので、長男もしくは長女が単独で、あるいは、長男と長女が不動産の権利を2分の1ずつ、等々、自由に決めることが可能です。

ただし、決定した内容を証明するために、遺産分割協議書を作成しなければなりません。また、この遺産分割協議書には相続人全員がご実印を押印して、ご実印の印影を証明するために、印鑑登録証明書もセットで添付する必要があります。

2.法定相続分の相続の場合

民法で定められた法定相続割合で不動産の権利を承継した場合についてです。

例えば、ご相談に来られたご依頼者様が、相続人1名である場合などは、1名である以上、遺産分割協議という概念はなく、相続登記の申請が可能となります。

実際、法定相続分の相続は、相続人が1名である場合が多いです。

母、長男、長女の相続人が複数の場合では、権利の割合でいいますと、

2分の1 母

4分の1 長男

4分の1 長女

となります。

この割合に基づき、不動産の権利を承継する場合は、基本的に遺産分割協議を行う必要がありません。

ある意味、民法のルールに則り、相続人間で公平に権利を承継できるという点がメリットになります。ただし、不動産を共有名義にすると、売却するのに相続人全員の関与が必要になる等、将来的に不都合が生じる場合があります。ですので、相続が発生した場合は、長期的な目線で、権利の承継をどのようにするのか、という点も重要になります。

3.遺言書がある場合
(法定相続人が相続する場合)

次に、よくある相続発生時のシチュエーションが、亡くなった方(被相続人)が、遺言書を遺していた場合です。

遺言書は、被相続人の最後の思いが記された文書になりますが、遺言書で不動産の権利の承継方法が指定されていた場合は、原則、そのように権利の承継がなされます。そして、遺言書の内容に基づき、相続による所有権移転登記の申請が必要になります。

遺言書は、

・自筆証書遺言

・公正証書遺言

・秘密証書遺言

と3種類あります。

(秘密証書遺言はほとんど実務でお目にかかることはありません)

また、自筆証書遺言も法務局で保管していた場合と、法務局以外の自宅等で保管されていた場合など、個々のご事情に応じて、準備と相続手続きの手順が異なります。

ですので、遺言書が発見された場合は、速やかに専門家にご相談ください。

まとめ

上記1~3以外の場合にも、相続登記が必要な場合はございます。

例えば、遺言書がある場合でも、法定相続人ではない第三者が相続する場合や、遺産分割調停による場合、等々、ご依頼者様ごとで事案は様々です。ですので、やはりご相続が発生した時点で、一度、専門家にご相談いただければと思います。

次回は、今回ご紹介した場合における必要書類について、ご説明いたします。